『近世のアウトローと周縁社会』を通し、西海賢二氏の著書をたどる


一昨日、臨川書店から冊子小包が届いた。
私にとっては臨川書店といえば、古書、そして、貴重資料集。
数年前に『大乗院寺社雑事記』12巻と、
『蔭凉軒日録』だったと思うが、画期的な普及版を出してくれた。
これらは蓮如上人の「お文始め」(寛正2年:1461)や、
吉崎滞在と関わる背景、時代の出来事が記されている基礎資料なのだ。
これから、読み進めることはないと思うので、購入はしていないが、
ありがたい企画だった。

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『日本書古書目録』は眺めているだけでも楽しい。
百万塔と自心印陀羅尼1軸で493万円と載っている。
いったいどこからこのような品が販売ルートに乗るのだろう?とか、
乗如・達如・厳如版御文章168000円とあるのは、いずれも大谷派の御門主だから「お文」と紹介しなければならないと思ったり、
結構楽しめる。
どうして私の所に古書目録が届くのかは分からないが、
てっきり今度もその類の書籍だと思った。

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開けてみると、西海さんからの本『近世のアウトローと周縁社会』だった。
2月28日臨川書店刊とあるから、発売前に届いたとことになる

西海さんは今年54才。東京家政学院人文学部、大学院助教授で、
法政大、二松学舎大愛知大学大学院でも教鞭を執っておられる。
主要著書に『筑波山山岳信仰』崙書房1981年、
武州御嶽山信仰史の研究』名著出版1983年
『近世遊行聖の研究』三一書房1984年、
『絵馬に見る信仰の形』批評社1999年、
それに、この後で紹介する諸本などがある。
これだけでもわかるように、
おそらく、この分野では、最も精力的に調査し、多くの論を書き、最も多く著書になさり、
世に問うておられるのではないだろうか。
年末に頂いた葉書にも「来年は何とかまとめようと考えています?」と書いてあったが、
早々にまとめられたのだ。


能登でも六十六部、巡礼、大乗妙典塔、ムラを訪れる人々の報告がある。
この本と切り結ぶことで多くのことが見えてくるに違いない。


以下は、手元にある西海氏の本( たいていいただいたもの )。
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石鎚山修験道1984(昭和59)年名著出版
石鎚山(1982?)は四国にある峻険な修験の山。
まだ四国へ行ったことがないので、想像するしかない。
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『漂白と定住 御師の村』秦野市民俗調査報告書3として刊行された。
当時西海氏は常民文化研究会を主催し、会報出版、執筆活動を精力的になさっていた。
その常民文化研究会の調査報告書。
御師能登でも調査し、記録を残しておかなければならないテーマだ。
釜屋名が御師に関わっているようで、御師がいたという記録が散見できる。
大きな風呂があったという高爪山麓の大釜なども、
廃棄物処理施設ができるまでに聴き取りなどを行わなければならないように思える。
→※20080121段階では、建設を認めない方向で動いている。
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『「浮浪<はぐれ>」と「めぐり」』1991(平成3)年ポーラー文化研究所刊。
表紙の絵は「一遍上人絵伝ー小田切の里の念仏踊り」。 
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『漂白の聖たちー箱根周辺の木食僧ー』
1995(平成7)年岩田書院
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石鎚山修験道[新装版]』
1997(平成9)年岩田書院
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『民衆宗教の祈りと姿ーマネキー』
1997(平成9)年西海賢二刊。
表紙の図は「富士山諸人参詣之圖」。
マネキとは富士信仰の講印、講名、先達などを書いた奉納品で、
西海氏は、この本で38の施設に存在する12000点余のマネキ(一括も多いため)1961の一覧表、
膨大な図版を提示する。
このマネキ文化と箱根周辺の木食僧に対し、
能登では、能登町藤瀬間島虎墓、
珠洲市上戸町永禅寺曾我兄弟墓、
能登町山田大盛院(曹洞宗)の秘仏観音(『能都町史』第3巻p664)
などが富士・箱根信仰と関わる。
木食僧の残した名号については、
『歴史の道調査報告書 第5集 信仰の道』「第4章第4節加賀・能登における念仏行者の足跡ー近世後期の徳本・義賢行者名号塔からー」(芝田悟著)平成10年、石川県教育委員会刊がある。
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石鎚山と瀬戸内の宗教文化』1997(平成9)年岩田書院刊。
税込みで6195円の本格的な本。
これもいただいている。あらためて申し訳なさが…湧きあがってくる。