二つ足の御膳

ある旧家でお茶を頂いた。


輪島塗の二つ足(二枚足)御膳に、お茶とお菓子を乗せ、それを囲炉裏ぎわに運んでこられた。

当の御当主は、雅楽メンバーのお一人で、篳篥(ひちりき)を担当しておられる。
その関係で、伝統的な場につながることが多い。
能登島で、御膳でのお茶が出たのだという。
その時、なんと雅〈みやび〉なことをするのだろうと思ったとのこと。


その方の家にも、品〈しな〉はいいのに使われていない、もったいない輪島塗の御膳が相当ある。
テーブルを出すのも面倒なので…、とおっしゃりながら運んで来られた「二つ足」でのお茶。


能登では、土蔵や屋敷の奥深くに眠っている輪島塗が多い。
こういう形であってもいいし、日常のチョイとしたアクセントとして元々用いてきた輪島塗りの用途を考えることが出来れば…、
傷みの修復なども含めて、伝統産業が元気になる。


お茶がおいしいのかどうか、分からないくらい…、
豊かな遊び心とセンスを味わさせて頂いた。


ところで二つ足と書いてきたが、猫足、八角〈やすま〉、折敷など、御膳の形には様々なものがある…らしい。