鯖(さば)食ったー!

山口県周防大島町の藤本理稀(よしき)ちゃん(2歳なりたて)が、
昨日の朝、3日ぶりに見つかった。

今朝の中日に、そのことに関して、柳田国男「山の人生」にある咄が紹介されていた。
迷子になった子を探すのに声や音で探したという。
理稀ちゃんにも、地区拡声器を使って区長さんの呼びかけ、母親の
「よっちゃん-!かあちゃんだよ-、返事して。早く出てきて」の呼びかけがあった。
どこかから、よっちゃんの声が聞こえはしないか、捜索の人々は研ぎ澄まして聞き耳をたてたという……。

そこで、ふと思い出したのが、子供が行方不明になると、天狗にさらわれたと考えられていた時代が、ついこの前まであった、
という話である。
天狗は鯖が嫌いなので、掠った子は、鯖を食べてるぞ(だから早く離せ-解放しろ……の思いを籠め)、鯖食ったー、と大声で叫びながら、不明者を捜した。

この都市型の咄を初めて聞いたのは、40年以上も前、小林忠雄さんからだった、と記憶している。
民俗学の導入にふさわしい、地域性のくっきりしている伝承

理稀ちゃんが見つかった喜びの中で、この咄を思いだし、文献に載っているとすれば『都市の民俗・金沢』だろうと思い、サーと見たのだが、載っていないようである。

『おもしろ金沢学』には、「天狗とサバは相性が悪い」の題で、このことに触れている。
そこには、天狗がさらうのは男子のみで、女子をさらうのは鬼だという地域もあるそうで、この場合は
サバ食ったーは男子の不明者に限られる。

鬼は何が嫌いなのだろう?