地震で動いた斗(ます)・栱(肘木)・桁ー障子戸ー
本堂が再建されて300年近く経つのだろう。
享保の大地震に遭っているかも知れないし、そうでなくても先の能登沖地震はじめ何度もの揺れに遭っているはずだ。本堂全体がややねじれている。
今回の地震でそうなったのか、元もとそういう状態だったのか分からないもので本堂の桁と柱との間の透き間がある。
町中のお寺なので、道場本来の聴聞の場として、勉強会その他でもかなり利用している。
大きなケヤキの桁が、万が一落ちてきたら大変なことになる。
すきまがあるなァと、のんびり構えてもいられないし、下から眺めていてもどうにもならないので、ハシゴにのぼり、すぐそばの視線で確かめた。
かなり深く組み込まれており、落ちる心配はなさそうだ。
そこで、今まで考えたこともなかった桁を支える斗栱(ときょう)の役割に目が向いた。差し込みを更に斗栱が支えている?
斗栱(ます・肘木)部は装飾としてしか見てこなかったのだが、近づいて子細にみると、大きな桁を斗栱も支えていることがよく分かった。
( 用語が合っているのか、よく分からないままに書いている。「仏教建築の基礎知識」という本を見ながら、肘木は栱なのか…といった具合なので間違っているかも知れない )
古人の知恵のすごさに感嘆しながら、肘木部が揺れで少しはみ出ている部分を何とはなしに押すと、柱に戻っていくではないか。
しかも斗部分は動かない。斗を木槌で叩くと少し動いて斗栱が綺麗な形になる。
何と微妙な衝撃の和らげかたをしているのだろう…とさらに驚嘆しながら、14ヵ所ほどコンコンやっていった。
そのうちの3ヵ所が新しく補修されている斗栱で、そのうちの1つははめ込み方が変だった。
それをコンと軽くやったら、ドカンと斗栱が落ちてしまった。
なんといってもケヤキ材だ。下でまともに受けたら大変なことになる。
これをセッセコ取り付けた。
[ここまでやった時点で、斗をはめ込むことが出来ないことに気づいた。翌朝やり直し]
気分は宮大工。
斗栱を点検する前に地震で破れた障子の張り替えをした。
障子戸がはずれないので、ジャッキーで枠を持ち上げての作業。
あれやこれで、二日かかった。