六日年越し、アマメハギ(あまめはぎ)
2004年(平成14)1月6日撮影。
アマメハギに餅などの土産を持って行ってもらう。
今日は六日年越し、で重要な行事が各地で行われてきた。
あるいは、いる。
代表的なものは、門前町皆月の「アマメハギ」(国指定重要無形民俗文化財)。
アマメハギについては、北國新聞の夕刊「舞台」で書いたことがある(2004年2月10日)。
今年は大雪で、車を出すことさえ難しい日となったが、
二年前は雪がなく、月光が冴え渡っていた。
「伝統行事が育てるもの」(新聞・PDF)
本文
石川県には六件の国指定無形文化財がある。
その最初の行事が「アマメハギ」で、
門前町五十洲〈いぎす〉は1月2日、
同町皆月は6日、
内浦町秋吉〈あきよし〉は節分と、
それぞれ重要な節目の前の晩に行われる。
私が出会わせていただいたのは、皆月の「アマメハギ」である。
これは異形の面を着けた一行が、
「なまけもんはおらんかー」と
「アマメ(囲炉裏〈いろり〉に当たりすぎると出来る一種の低温やけど)」を剥〈は〉いで回る行事で、
猛々〈たけだけ〉しいアマメハギに、
幼子〈おさなご〉は怯〈おび〉え、怖〈こわ〉がって泣きじゃくる。
「アマメハギ」と子供、の印象が強いせいか、
意外に思ったのだが、
子供がいるいないに関わらず、一行は全戸を訪れる。
「どうやって入りゃいいげ…」
「今晩はー、アマメ来たぞー!、かな」
「ほんで、いいがでないか」。
形相〈ぎょうそう〉はいかめしいものの、
高校生を中心とした面々のやりとりは優しい。
迎える家では、儀礼の後で、たいてい
「○○君けエー、でこーなって」と言葉掛〈が〉けをなさる。
「アマメ」に威〈おど〉かされて涙ぐんでいた子供が、今、
「ハグ」役割を担〈にな〉う少年になって回っている。
そのことに対する喜びと、
寒空〈さむぞら〉の元を歩む、みんなの宝物である少年に対する慈〈いつく〉しみが、
つい言葉掛けとなって溢〈あふ〉れ出る、
といった趣だ。
一行の足下〈あしもと〉を皎々〈こうこう〉と照らす冬の月が、
心の中にも灯りを点〈とも〉し出す。
伝統行事の持つ世界は、限りなく深い。
一週間後に、この記事を読んで加賀市の福田久也さん(68才)という方が、読者欄に
「繰り返し読み、…心温かくなった。」と投稿なされた。
叩き堂まつり
珠洲市片岩町の叩き堂祭り(珠洲市指定無形民俗文化財)も行われる。
叩き堂は充分県指定レベルの行事だと思う。
この雪の中、カメラマンの渋谷利雄さんが、
片岩に行く途中に寄って行かれた。