雅号 渓虹さんからのたより(返事)。

滅多に無いことだ。『妙好人千代尼』を利用して、昔の知り合いで、分かる範囲にも連絡を取りだしている。
今日、たよりが届いた。
50年前、大学で出会っていた人だ。
手紙の書き出し部は、そのまま色紙になる素晴らしい字…
しかも、選んだ句が
蘭の香やなじみでもない草にまで
である。
これは「恩にて報ず」(p167~8)で引用した句である。

恩にて報ず
   仇(あだ)を恩にて報ずるといふ事を
  手折(たお)らるゝ 人に薫(かお)るや 梅の花 
 梅の花が、枝を折った人を包むように薫っています。枝を折る「仇」に対して、千代尼は、香りまで添えて折られる梅に、恩で報いるのだと頭が下がりました。逆の意味で用いる「恩を仇で返す」ということばがありますが、返すと報ずでは大きな違いがあります。返すのはお互い様です。報ずるのはもっと大きな広がりです。この句でいえば、届いた香りが、さらに体全体、周囲一帯を包み込んでいる様子が「薫る」に表現されています。仇を恩で返すことさえ至難なのに、報ずるありようも、間違いなく存在します。千代尼は折られる枝に、それを見ました。
 次の句にも、自己中心の生き方からは気づくことのない、他力のやさしさが詠われています。
  蘭(らん)の香や なじみでもない 草にまで

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この句を選ばれることもすごい…。
~も、~も、~も……、次々とこの人たちの素晴らしかった空間、世界が胸をよぎっていく。
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先頭が南信一先生―著書に『総釈 支考の俳論』など。

書には書を。
思いついたのが、打雲紙、源仲実需書の「文化元年三月廿八日 開山親鸞聖人五百五十回忌 追慕五十首倭鎶 出題冷泉入道前大納言等覚」の巻子部分。
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それに、蘭の句を書いた千代尼の字(『千代女の生涯、芸術・心』松任博物館刊より)
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などを、お送りした。

来月上旬、その街を歩いてくる。