『妙好人 千代尼』―『真宗』3月号・書評、「同朋新聞」3月号

19日に3月号が届いた。
20日に重版発行。
この新聞、雑誌でこれまでの、集中的に多くしていただいた、宣伝、紹介文を終える。

真宗』2018年3月号

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真宗王国・加賀国松任が元禄期に輩出した、加賀の千代女。
本書は、宗教民俗研究者として知られる著者が、篤信の念仏者であった干代尼に光をあて、数多い伝説が生まれ伝えられてきた背景にも迫っている。
有名な「朝顔につるべとられてもらい水」の句は、千代女が三十五歳の頃「朝顔やつるべとられてもらい水」へと変わる。「に」から「や」への変更は、この世に生をいただいたもの同士の共感であり、当時すでに教えを聞く場があったのではないかと指摘。
また、わが子を失った母の切々とした思いが綴られた「蜻蛉釣今日はどこまで行ったやら」「破る
子のなくて障子の寒さかな」が、千代の句と伝わった背景には、悲しみのなかでも苦を受け入れ「あるがまま」を生きた同朋としての千代を、時代が求めたからではないかと推察している。
辞世の句は「月も見て我はこの世をかしく哉」。
本願のはたらきに励まされ、おかげさまの日々を生きた千代。
本書には細やかにルビもふられ、登場人物には丁寧に生没年が付されており、とても読みやすい。
干代尼の句を通して、「真宗の生き方」が広がり、土徳の風土が生まれた過程までをも知る、目からウロコの内容である。
混迷な現代を生きる私たちにとって、格好の真宗入門書であるといえよう。

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「同朋新聞」 2018年3月号

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江戸期を代表する俳人・加賀の干代女。真宗門徒であった千代の句の信心の世界を、土徳の風土とともに読み解く。