♪佐渡は四十五里波の上…

有名な佐渡「おけさ」の歌詞、
♪来いとゆうたとてゆかりょか佐渡へ、
佐渡は四十九里波の上。
と今は歌っているが、
藩政期、明治期の古い歌詞を見ると
四十九里ではなく四十五里となっている。


たとえば『日本歌謡集成第十二近世編』俚謡には、佐渡おけさにこの歌詞はなく、「潮来節」に
○「来いと云うたとて行かれうか佐渡へ、佐渡は四十五里波の上」と四十五里になっている。



唐突にこのことに触れようと思ったのは、先日発刊した
能登』2014年夏号の「特集記事・佐渡」で、金剛峯寺の写真を見たことによる。
この雑誌は、非常に完成度の高い記事を提供することで知られており、この記事でも、先の号で、金剛峯寺も登場する「見附島と法住寺」が載っていることが紹介されている。


珠洲には見附島という不思議な形の島があり、
弘法大師の伝説が島名となっている。
この伝説には、佐渡の小比叡山蓮華峯寺がセットとなっており、
珠洲市史』第2巻「仏教伝承」を書いた昭和52年から、
一度、蓮華峯寺をこの目で見たいと思っていた。
37年前からのことだ。


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下段、左の註。
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「見附島と法住寺」を書いた本人が忘れているようなことの指摘によっって、
まだ行ったことのない佐渡が急に身近に感じられ、
おのずから思いを巡らすことになった。




佐渡を歌った歌には早くから親しんでいた。
「東京へ戻っておいでよ」(守屋浩)
(惚れたと言ったら あの娘は泣いていた、生まれは越後の佐渡だといっていた…)
「おけさ歌えば」(橋幸夫
(こいつを歌うと 泣けるのさ…)
それに「佐渡おけさ」。
佐渡おけさは盆踊りで踊ったので、たぶん今でもある程度踊れるだろう。
いわば、身近な、隣の島で、
昭和50年代には珠洲飯田~佐渡小木航路もあったのに
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※『写真アルバム 昭和の能登半島』より


来いとゆーたとていかりょか佐渡へ…のまま。

佐渡は四十五里…

○先に記した『日本歌謡集成第十二近世編』俚謡の歌詞。
○(音頭)来いというたとて行かりょか佐渡ヘナ、(同音)ヨンヨイ、(音頭)佐渡は*四十五里ナイヨ波の上ネー、(同音)波の上、
四十五里ナ、佐渡はヤ、佐渡
四十五里ナイヨ、波の上ネー、(音頭)波の上でもナ、御座るなら御座れヤ、(同音)ヨーンヨイ、(音頭)舟にら櫓もあるナイヨ、櫓もあるネー、(同音)櫓もある、櫓もあるナ、舟にや櫓もあるナイヨ、擢もあるネー。(七浦村高砂踊)『鳳至郡誌』
○来いと言うたとて行かれよか佐渡へ、佐渡
四十五里波の上、波の上でも来ようならござれ、船に艪もある櫂もある。(『珠洲郡誌』)

佐渡の小木、珠洲の小木

○昔の(御船権現の)社地は三船と云て風景の磯山あり。沖よりは大船の如くに見ゆる山にて御船の端と云て海に出る崎にあり。誠に船形の松山なり。佳景至極なり。(中略)
また、佐渡の国にも、小木と云に三船山あり。三船権現あり。ご神体猿田彦の御同体なり。『能登名跡志』大田頼資(安永6、1777)
○それより小木にいたる。(中略)
景色は此辺すべて我國とはおもはれず、黙して感ずるより外はなし。兼て聞く田家の歌に、来いとゆたとてゆかりよか佐渡へ、佐渡は***四十五里波の上(此の歌新潟の曲と申し伝うれど、新潟より佐渡は***四十五里はなし。今日、疑を解く)此所より***四十五里なり。此地の女がうたいそめしととなへ、(以下略)『能州日暦』宝田敬(弘化4、1847)

佐渡珠洲の「御所縁桜」

珠洲の三崎の御書院桜、枝は越後に葉は佐渡に、花は大坂の城に咲く
七尾まだら・珠洲郡内浦町酒屋歌・内浦町白丸祭礼曳山唄・内浦町田切唄(『石川県の民謡』)。
珠洲市上戸・若山・鵜島曳山音頭高砂節(珠洲市民謡研究会収集)に載る。
飯田トロ山祭りのキャーラゲでも唄っている。
三崎の御所縁桜ー珠洲市三崎町。須須神社(式内社)高倉宮拝殿前にあった桜。養老元年元明天皇より寄進されたという。
珠洲郡曳山唄では、大阪ではなく名古屋(「加能民俗」)。
○「佐渡と三崎の御書院桜本は越後に葉は里に落つる木の実は津の国に」信濃南佐久(「日本歌謡類聚」下巻)。
以上「口頭伝承」『能都町史』第2巻、昭和55年刊、担当西山。
珠洲の三崎の御所縁桜、枝は越後で葉は佐渡ヶ島、花は名古屋の城で咲く『珠洲郡誌』

佐渡関係の本

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佐渡 自然・文化・社会』九学会連合佐渡調査委員会、平凡社、1964年、1989年復刊
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『越後・佐渡文化財散歩』学生社、昭和48年
宮栄二・玉木哲・計良勝範・花ヶ前盛明

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日本海佐渡』古志書院、1997年刊
網野善彦中村格・内山節・福田アジオ・篠原徹