『語られた親鸞』-塩谷菊美氏ー、『佛光寺の歴史と文化』

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素晴らしい本が届いた。
希望というか夢の体現とでもいうべき著である。

帯の文

人は宗祖親鸞に何を求め、その人生を語り継いできたのか
時代によって変化する親鸞の姿。
史書ではなく「物語」として親鸞伝を読み直すことによって見えてくる、真宗門徒の信仰のかたち

鎌倉時代から真宗門徒は教義を人格化させた「親鸞聖人」の物語を作り、その物語の共有によって、教義の伝承と集団の結集を図って着ました。(中略)今、私たちの脳裡にある「親鸞」像は、何百年もかけて育まれてきた、有名無名の人たちの希望、願望の化身と言ってもよいのだと思います。(あとがきより)。

目次
第一章、物語型の教義書ー鎌倉時代後期から南北朝時代
第二章、「正しい」解釈の追求ー南北朝から室町初期ー
第三章、物語不在の時代ー室町中期ー
第四章、真宗流メデイアミックスー室町後期から江戸初期ー

第四章に古浄瑠璃に関する論が展開される。それによって『真宗浄瑠璃』が生きてきた。
その『真宗浄瑠璃』所収の最初が「しんらんき」で、

しんらんき 上 初段 
さてもそのゝち、それてんぢくにててんしんぼさつ、唐土にてどんらん、さて日本にしゅつしゃうあつて、てんしんのしんと、どんらんのらんとをかた取、しんらんとあらわれさせ給ふ。
 ゆらひをくわしく尋ぬるに、しんむ天王七十七、後白河のゐんの御うにあたつて、あまのこやねの御びやうへい、太しょくはんより廿一代にあたつて、くはうたひこぐうの大しんありのりとて、くぎやう一人をはします、…

と『古浄瑠璃正本集』が引用されており、この調子でずっと続く。いったいどんな層を読者に想定しているのだろう。
せめて、漢字交じり文を提供するぐらいの親切心があれば…、あるいは読もうという気が起きたかも知れないのだが、この本の担当者ではなく、塩谷さんの近刊によって、読もうかと思う意欲がちょっと湧いてきた。皮肉なことだが、ありがたい。
第五章、「東国の親鸞」の発見ー江戸中期ー
第六章、読本から近代史学へー江戸後期から明治ー
中近世親鸞伝年表
本書で使用した諸本一覧…39冊

抜き刷り「『親鸞聖人正明伝』と知空著『御伝鈔蒙記』ー伝存覚作の実態」
『御伝鈔注釈』大系真宗史料
抜き刷り・2種
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『近世親鸞伝』塩谷菊美氏解説。

佛光寺の歴史と文化』

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総論ー金龍静、近世佛光寺と地域社会ー松金直美、非本願寺親鸞伝の成立ー塩谷菊美、佛光寺門主の葬送儀礼蒲池勢至、など17編。