『完全版宗教なき時代を生きるために オウム事件と「生きる意味」』(森岡正博氏著)、『さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生』(伊東乾氏著)
『完全版宗教なき時代を生きるために オウム事件と「生きる意味」』が出たことは知っていた。
これだけ本が氾濫し、毎日の宣伝を見ると選ぶより見ないで過ごそうの気持ちの方が強い。朝日新聞の読書欄もタイトルだけを眺め、過ぎさろうと思った時、この本のタイトルが目に入った。
読んでみたら、私にとっての繋がりが次々と広がってくるものだった。
オウムに関しては、先日、伊東乾さんのツイッターを読んで、ああー!と思った。
それは伊東さんが大学の授業に獄中にある豊田亮氏の肉声を取り、学生たちに聞かせているという話をご本人から聞いていたせいである。
そのツイッターには、「いまどのような状況にあるか という事実だけ 15分ていどだけ話す―それが なくなった」とあった。
今朝の記事には「オウム事件は平成のうちに終わるべきだ」と言った法務省幹部のことばを、当然ながら批判的に書いている。
そういうことだったのだ。
「空中浮遊」にも触れている。
かつて日本民俗学会のあとのた夕食会場で、空中浮遊なんて少し修行した修験者なら誰でもできますよ、と当時から著名だったT・Yさんが座ったまま少しジャンプして見せてくれた。あとは写真の撮りようだ。その時その場で一緒にホーッと驚いた高桑守史氏は去年、先に逝った。
何よりも森岡氏の本が事件の翌年に書かれたものである、ことがいい。
これら3人は、東大で物理を専攻し、伊東さんはさらに総合学科(情報、脳の働き、音楽専攻だとおっしゃっていた)博士、この方は哲学に進まれた。おそらくお二人は知り合いなのだろう。
きしっとした、人を得た出版だったのだ。
伊東さんの本は、「サイレン・ネイビー」の題名が語っているように、近代日本になった時から抱えている陸軍と海軍の問題に遡ってサリン事件の本質をえぐり出そうとした壮大な意欲作である。
同級生の一人はサリンを撒きに地下鉄に、伊東氏は節談説教の声・聴衆を惹きつける場、声明、楽器としての本堂構造の解明に向けて、真宗世界に入られた。
『さようならサイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生』も、彼が絶えず言っておいでる事実だけを伝え、親鸞聖人の「愚昧の今案をかまえず(「御伝鈔」大谷派『『真宗聖典』725頁)に通底し合う好著である。
『完全版宗教なき時代を生きるために オウム事件と「生きる意味」』(森岡正博氏著)―著者に会いたい―朝日新聞・読書欄
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein ツイッター
『さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生』文庫版背表紙キャプション
なぜ彼は地下鉄にサリンを撒かねばならなかったのか。オ
ウム真理教事件・豊田亨死刑囚と東大物理学科で同級生だ
った著者が、知を尽くし存在をかけて迫った「親友の大罪」。
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2006年11月集英社刊。文庫本2010年11月25日第1刷