香樹院徳龍師の軸と芭蕉「荒海や佐渡によこたふ天河」

年度末も近づくと、やり残しているもののうち、
ちょっと動けば分かることぐらいは片付けておきたい、との思いが強くなる。


その一つが、一度見かけた徳龍師の軸である。
何が書いてあるのか、
それを確かめるため、20日
12組坊守会、金沢での用事の帰りに宝達志水(ほうだつしみず)町に行き、
軸をお持ちのお寺へ寄った。
f:id:umiyamabusi:20081226210734j:image
仕舞ってあるのを出していただいた。申し訳ない。
そのお寺と徳龍師の師である香月院深励師のお寺と親戚にあたるのだそうだ。
来歴が窺える。


ああ、この文が書いてあったのか…とまず思った。
今まで長い文章のために、読む気が起きなかったと思っていたのだが、
11日にかいたー悪しき様なることを弄ぶべきやーより短い。
記憶の曖昧さ。


文は
「おとろかすかひこそなけれ村雀 みゝなれぬれは鳴子にそのる
 此歌を御ひきありて折々仰せられ候
 たゝ人はみな耳なれ雀なり と仰せられ候」。
「仰せられ」たのは蓮如上人で、
蓮如上人御一代記聞書175」(『真宗聖典東本願寺出版部刊P886)では、
「前々住上人、(同文 雀なり)と仰せられしと云々」とある。



f:id:umiyamabusi:20081226211337j:image
これは奥能登のお寺で見かけた。
「荒海や…」。芭蕉だ。
奥の細道」だろうから
あとで本文を見ようと写真に撮って帰った。
ところが、「奥の細道」には、序文が載っていない。
いろいろ調べてみると、この序文は「銀河の序」といい、
許六編「本朝文選」などに載っているらしい。
その孫引きしか見ていないので何だが、
微妙に違っている。
20日に金沢の泉野に用事があって行った折、図書館の横を通った。
幸いに、この序のことを思い出した。
はじめて図書館の地下駐車場に車を入れ、
古典文学大系を捜した。
地下に書庫があるというのだが、そこが分からない。
漸くたどりついたのだが、肝心な俳文集がぽこっと抜けていた。
ということで、
「風俗文選」には記されていないと思われる
「かかる風景のいみじきことを知らず…」
あたりは、
宿題のまま…。

南信一先生

この話にはもう一段階ある。
学生時代に卒論を見てくださった先生が
確か芭蕉の研究者だった、
ということを思い出した。
南信一とおっしゃる。
インターネットで捜してみると
風間書房などから、去来、許六、支考などの俳論を
多く出版しておいでになる。

総釈 支考の俳論

総釈 支考の俳論

この本などは27300円、1291Pの大著だ。
いつも、何かを書いておいでる風だったが、そういうことだったのか…。
先生は、毎朝、一首ずつ万葉集を味わっている、とおっしゃっていた。
全部味わい尽くすには13年年近くかかる、ともおっしゃていた。


能登の僧が味わっていた世界と
先生のお言葉の味わいが
結びついた…


時折、風の音が激しく聞こえてくる部屋で
そのような想いにひたっている。